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監修:順天堂大学医学部内科学血液内科 主任教授 小松則夫 先生

真性多血症という病気を理解していただくために、はじめに血液のなりたちや骨髄増殖性腫瘍について説明します。

1.血液のなりたち

血液は骨髄で造られています1,2)

わたしたちのからだをめぐる血液は、固形成分である血液細胞と液体成分である血漿からできています1)。血液細胞には、白血球、赤血球、血小板があり、それぞれがわたしたちの生命を維持するために重要な役割を担っています2)
血液細胞は、顆粒球・単球(白血球の一部)、赤血球、血小板を造る骨髄系、リンパ球(白血球の一部)を造るリンパ系の2つの系統があり、すべて、骨の中の骨髄にある造血幹細胞から造られます2)

血液細胞の数は一定に保たれています2)

造血幹細胞は絶えず分化を繰り返しながら、次第に成熟して様々な血液細胞となりますが、血液細胞の数は常に一定に保たれており、寿命を迎えて機能しなくなった血液細胞は血液中から除かれます。

2.骨髄増殖性腫瘍とは

骨髄増殖性腫瘍は造血幹細胞の増殖・分化(成熟すること)に歯止めがきかなくなってしまう状態です3)

ところが、造血幹細胞の遺伝子に変異がおこると、血液細胞が形態異常を起こしたり、過剰に増殖したりします。このうち、骨髄系の血液細胞が造られる過程で異常な増殖が起こる病気を総称して骨髄増殖性腫瘍といい、赤血球が増加する「真性多血症(PV)」、血小板が増加する「本態性血小板血症(ET)」、白血球が増加する「慢性骨髄性白血病(CML)」、骨髄が線維化し骨髄以外で血球が造られてしまう「原発性骨髄線維症(PMF)」などがあります。

骨髄増殖性腫瘍の分類4)

真性多血症や本態性血小板血症は心筋梗塞や脳卒中の原因にもなります3)

真性多血症では血液の粘度が上がり、血液の流れが悪くなったり、血管の中に血のかたまり(血栓)ができやすくなったりします。血液の流れが悪くなると、脳梗塞や心筋梗塞など、生命を脅かす病気にかかりやすくなります。また、本態性血小板血症では血栓ができやすくなったり、反対に出血しやすくなることもあります。 このことから、真性多血症や本態性血小板血症の治療ではこれらの合併症を未然に防ぐ意味でも、適切な治療が必要になります。それではそれぞれの疾患について詳しくみていきましょう。

  1. 小川哲平 他編著. 血液学(中央医学社)p2-5,1993
  2. 小川哲平 他編著. 血液学(中央医学社)p6-20,1993
  3. 木村文彦 企画. 慢性骨髄性白血病 骨髄増殖性腫瘍 診断と治療のABC(最新医学社)p35-43,2016
  4. 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版 一般社団法人 日本血液学会 編(金原出版株式会社)P94-100より作図

3.真性多血症とは

真性多血症とは 1,2)

赤血球は、主に酸素を運ぶはたらきを持つ血球です。すべての血球のもととなる「造血幹細胞」が分化・成熟して赤血球が造られます。赤血球が造られる量は、エリスロポエチンという赤血球産生刺激因子によって調節されています。
「真性多血症(polycythemia vera:PV)」は、造血幹細胞の遺伝子(JAK2遺伝子)が何らかの理由で傷つくことで、エリスロポエチンによる調節が利かなくなり、赤血球が過剰に造られてしまう病気です。「真性赤血球増加症」と呼ばれることもあります 1) 。 真性多血症の発症率は年間10万人に2人程度と推定され、中高年に多い病気です 2)

真性多血症の症状は1,3,4)

真性多血症と診断された時には症状がみられないこともありますが、病気が進行して、血液中の赤血球が増えすぎると血液の粘度が上がって、血液の流れ(血流)が悪くなったり、血管に血のかたまり(血栓)ができやすくなったりします。
血流が悪くなってくると、頭が痛くなったり、重く感じたり、めまいや視力障害、顔が赤くなることがあります。また、脳梗塞や心筋梗塞、肺梗塞などの血栓症もみられます。このほか、集中力の低下なども指摘されており、仕事などを含む日常生活に影響することが問題となっています。

真性多血症によって引き起こされる合併症

また一部の患者さんは(長い)経過中に骨髄線維症や白血病に移行する場合があります。

■骨髄線維症

一部の患者さんは(長い)経過中に骨髄線維症に移行します。
骨髄線維症は、骨髄内に線維質のコラーゲンができて骨髄が固くなり、正常な血液を造ることができなくなる病気です。進行に伴い、ふらつきやお腹の張り・不快感、体重減少や発熱などの症状を伴うようになり、さらに進行すると感染症や白血病などの合併症が起こります。

■白血病

一部の患者さんは(長い)経過中に白血病になる場合があります。白血病は白血球(顆粒球や単球)が骨髄内で異常に増殖し、骨髄を占拠してしまいます。そのため、正常な血液細胞が造られなくなり、貧血や免疫力の低下、出血傾向、脾臓のはれなどの症状があらわれます。

■心筋梗塞・脳卒中(脳梗塞)

真性多血症では血栓ができやすくなっており、動脈に血栓が詰まることにより心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞)を引き起こします。真性多血症の主な死亡原因となっており、何よりも血栓を防ぐことが重要です。

真性多血症の検査と診断1,6,7)

【血液検査で赤血球が増えているかどうかを確認します】
血液検査では、ヘモグロビン(酸素を運ぶ色素)の濃度、またはヘマトクリット値(全血液中の赤血球の容積率)を調べます。ヘモグロビン値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、もしくはヘマトクリット値が男性>49%、女性>48%であれば、赤血球が増えている目安となります。
血清エリスロポエチンの濃度も調べます。

【ほかの理由で赤血球が増えていないかを調べます】
赤血球が増える「多血症」には、真性多血症のほかにも「相対的多血症」、「二次性多血症」があります。
下痢や嘔吐など何らかの理由によって血液中の水分が減り、赤血球の濃度が見かけ上高くなった状態を「相対的多血症」といいます。働き盛りの中年男性に多いとされている「ストレス多血症」もこれに含まれます。
一方、何らかの病気が原因でエリスロポエチンが増えることにより、赤血球が過剰に造られる状態を「二次性多血症」といいます。慢性肺疾患や先天性心疾患などの病気で血液中の酸素濃度が低くなると、エリスロポエチンが増えます。また腫瘍がエリスロポエチンを過剰に産生することもあります。
相対的多血症や二次性多血症が否定されたら、真性多血症を疑います。

多血症の種類

絶対的多血症 真性多血症
二次性多血症(エリスロポエチンが増加)
 高地在住、慢性肺疾患、先天性心疾患、低喚起症候群、エリスロポエチン産生腫瘍(腎がんなど)ほか
相対的多血症 脱水などによる体液の減少
ストレス多血症

【血液検査、骨髄検査、遺伝子検査の結果から診断します】
骨髄検査では、赤血球のほか白血球、血小板に分化する途中の若い細胞が増えているかどうかを確認します。骨髄検査は、局所麻酔をして腰にある腸骨に針を刺し、骨髄液を採取して、その中に含まれる細胞の数や形を顕微鏡で観察する検査です。
遺伝子検査では、真性多血症の患者さんの95%以上にみられる8)JAK2遺伝子の変異があるかどうかを調べます。
血液検査、骨髄検査、遺伝子検査の結果から、以下に当てはまる場合、真性多血症と診断されます。

■真性多血症の診断基準9)

3つの大基準を満たす、もしくは大基準1、2と小基準を満たす
大基準

  1. ヘモグロビン値が男性16.5 g/dL、女性16.0 g/dLを超える、
    もしくはヘマトクリット値が男性49%、女性48%を超える、
    もしくは赤血球量が予測値の25%以上を超える
  2. 骨髄生検において、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞(多形成熟巨核球)の三系統の増殖により過形成を示す
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在

小基準

  • 血清エリスロポエチン低値

真性多血症の治療1,8)

【治療は血栓症の予防を中心に行います】

真性多血症の治療では、重篤な合併症につながる血栓症を予防することが、一番の目標になります。ヘマトクリット値を上手にコントロールできれば、良好な経過をたどることのできる病気です。
血栓症を防ぐ治療をする上で、血栓になりやすいかどうかをはかる指標があります。

  1. 過去に血栓症になったことがある
  2. 60歳以上

これらのどちらか一つでも当てはまれば、血栓になりやすい「高リスク」となります。どちらも当てはまらなければ「低リスク」となります。

リスクによって、治療法が異なってきます。
①高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病など、血栓ができるリスクの高い病気がある場合、
 まずはこれらの治療をしっかり行うことが大切です。
②低リスクの方の場合は、「瀉血療法」+「アスピリン療法」で治療します。
③高リスクの方の場合は、「瀉血療法」+「アスピリン療法」に加え、「細胞減少療法」を行います。

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版 一般社団法人 日本血液学会 編(金原出版株式会社)P102より

「瀉血療法」とは、血液中の赤血球の量を抑えるために、月に1~2度のペースで1回200~400mLの血液を抜き取る治療法です。高齢者や心血管障害のある方は、通院して脈拍などの状態に注意しながら、100~200mLの少量ずつに分けて行います。瀉血後は20~30分間安静にし、水分をとるようにします。
「アスピリン療法」は、抗血小板剤であるアスピリンを1日81~100mgの低用量で投与し、血栓ができるのを予防する治療法です。出血や消化器症状がある場合は注意が必要です。
「細胞減少療法」とは、ヒドロキシカルバミドという薬を用いて、赤血球の産生を抑える治療法です。ヒドロキシカルバミドに対して効果が不十分である場合や副作用が出てくる場合にはルキソリニチブなど、その他の治療法を検討します。ヒドロキシカルバミドには催奇性の問題があり、妊娠中や妊娠を希望する患者さんには、インターフェロンα療法を考慮する場合があります。
このほか、皮膚のかゆみなどの症状を軽くする治療を行うこともあります。

参考文献

  1. 山口博樹「真性多血症の診断と治療」最新医学 71(11):135-144,2016
  2. 小松則夫.日本内科学会雑誌 96:1382-1389,2007
  3. 木村文彦 企画. 慢性骨髄性白血病 骨髄増殖性腫瘍 診断と治療のABC(最新医学社) p174-183,2016
  4. Harrison CN et al. Ann Hematol 96:1653-1665,2017 より作図
  5. Marchioli R et al. J Clin Oncol 23:2224-2232,2005より作図
  6. 池田和彦、MPN診断の実際、最新医学,72(11)64-69,2017
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「骨髄検査/骨髄穿刺」
    (https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/kotsuzuikensa.html)
  8. 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版 一般社団法人 日本血液学会 編(金原出版株式会社)P102
  9. 直江知樹 他編 「WHO 血液腫瘍分類 改訂版ーWHO分類2017をうまく活用するために」(医薬ジャーナル社),2019